DOCTOR MESSAGE

呼吸器内科 秋葉直志

窓口としての呼吸器内科

当院では呼吸器内科を標ぼう、つまり看板を掲げて診療を行っています。しかし、実際の患者さんは自分のどこが悪いのか、なぜこんな症状がでるか分からないで病院に訪れる方が多くいます。私は喜んで皆さんとお話し、必要なら検査を実施した上で、どうしたらいいか相談します。そのまま当科で診療を続ける場合もありますし、病状に応じた診療科や病院へ紹介するかも知れません。

迅速な対応が可能です

呼吸器内科では、必要があれば様々な検査を行う可能性があります。待っていれば結果のでる至急の採血検査が可能です。これにより、炎症の強さや貧血、肝機能障害、腎機能障害の程度を当日に確認できます。その他に、胸部レントゲン検査、胸部CT検査も迅速に検査可能なので、肺炎や肺癌を疑う病変があるかどうかを迅速に判断することができます。

その他に呼吸機能検査や喘息検査のFeNO検査、心電図、心臓エコー検査、胸部MRI検査、たんの細菌検査も可能ですし、呼吸困難の患者さんに対して歩行時の酸素不足を見る6分間歩行試験や呼吸器リハビリなども開始しています。

自分の求めている医師像の原点

私にとって医師とは何でしょう。私の子供の頃は頻繁に熱発しており、近くの診療所で診療を受けました。また、小学校高学年で腹痛が起こり病院を受診し、虫垂炎と診断されすぐに手術を受けました。普段は体のことは気にしないものですが、ひとたびどこかに痛みや症状が出ると生活は不便になり不安が押し寄せてきます。何が起きているだろう、重要な病気ではないだろうか、そんな心配が押し寄せてきます。そんな時には医師は大きく頼りがある存在でした。

私の目指している医師は、外来で患者さんが診察室に入り、挨拶し言葉を交わしただけで患者さんがほっとできるそんな医師です。

胸部レントゲン写真の読影について

医学部を卒業すると、診療の現場に行きますが、胸部レントゲン写真の奥深さに惹かれていきました。胸のレントゲンには皮膚、皮下脂肪、筋肉、骨はもちろんのこと、心臓や肺、肺の血管の枝や気管支の枝などの様々な臓器の構造物が1枚の写真に写りこんでいます。ですから1枚の写真を読み込んで正常か異常かを判断することは簡単なことではありません。私は外科や呼吸器外科の経験を長年積んだために、胸部レントゲン写真や胸部CT写真に写っているものを実際に手に取り、顕微鏡で観察する経験を長年積んできました。つまりレントゲン写真で自分が診断した後に、手術を行い、正確な最終診断を確認するという、貴重な経験を続けてきました。自分の写真の読影力は長年の経験に裏打ちされた段階に到達できたと思っています。今でも毎週何百人のレントゲンの読影やCTの診断を継続しています。

患者さんと向き合う診療を目指して

私の診療経験は、東京慈恵大学附属病院と国立がん研究センター中央病院、そして東京慈恵大学附属柏病院で外科医として培ってきました。柏病院では後に副院長、そして院長を担当することになりました。毎週外科手術を担当しながら、病院の管理職ができる程、私は器用ではありませんので、院長になってからは手術を担当するのは断念しました。手術を担当しているときは手術前、手術の大イベント、手術後というように時間が流れていますが、手術を担当しなくなると、一歩下がって、もっと大きな視野で患者さんと対応することができるようになったと考えています。つまり、患者さんに自分の家族のような立場で対面し、何をしたら患者さんにとってメリットがあるか、何をするべきではないかと考えて診療を行っています。

医師としての喜びは

外来には様々な患者さんがいらっしゃいます。健康診断の胸部レントゲンで異常を指摘された方、咳やたんが続き、診療を受けて薬を処方されたけど改善しない方、最近呼吸が苦しくなったと感じる方などです。様々な訴えを持った患者さんと対面し、何が起きているかを判断し対応します。胸部レントゲンの異常の確認では、当日に胸部CT検査が実施可能なので、一緒に写真を確認することができます。咳やたんの原因は様々で簡単ではありません。説明をした後で治療を開始し、次回外来でお会いした時に、「先生、すぐに良くなりました」と言ってもらえるとホットして嬉しくなります。但し、この場合は、「もう来なくいいですよ、今日で終診にします」というときは嬉しくもあり、もう会えなくなりますから寂しくもありです。

医師としても信条(モットー)は

第一の大きな柱は、重要な疾患を見逃さないことです。私は多くの肺がんの治療をしてきました。肺がんの多くは咳や痛みなどの症状はありません。また、通常のレントゲン写真で指摘できないこともしばしばあります。ですから外来に来た咳などの症状を持った方が、可能性は低いですが肺がんを持っているかも知れないことは常に念頭に置いています。肺がんがあるのことを症状が教えてくれているかも知れないのに、薬を処方して安易に時間を過ごしてはいけません。また、結核は周りの人に移してしまうかもしれませんので要注意です。肺の病気だけではありません。心臓の胸痛や腹痛でも、危険な疾患や、すぐに手術が必要な疾患を見逃さないように心掛けています。

第二の大きな柱は、患者さんが納得できる医療を提供することです。現状を患者さんやご家族が理解できるように説明し、ご理解いただいた上で治療方針を相談します。納得のいかない検査や診療を強制することはありませんので、遠慮なく申し出てください。

患者さんの紹介

外来対応した結果、当院で対応が困難な場合や患者さんが他の病院の診療を希望された場合には、当院での検査資料を付けた紹介状を作成します。当院の隣に位置する東京慈恵医大柏病院とは強固な連携体制がありますのでスムースに紹介することができますし、その他の病院への紹介も積極的に行っています。

呼吸器内科の対象疾患は

咳で訪れる方が大勢いらっしゃいます。実は咳の原因は様々なのです。カゼや新型コロナの後の感染後の咳や、喘息や咳喘息による咳が代表です。呼吸困難や咳の続く喘息や咳喘息の方の治療は吸入療法や内服が中心です。咳の症状の方の中には肺がんや肺炎をお持ちの方もいますので見逃さないようにしなくてはなりません。肺がんといっても、その日の内に紹介状を用意して手術をお願いする方もいますが、すりガラス陰影を呈する方の多くは増殖が極めて遅いので、何もせず外来で経過観察を行っています。また、肺炎に関しては、普通の市中で起こる肺炎や結核、非結核性抗酸菌症や間質性肺炎と種類が様々です。睡眠時無呼吸症候群の検査やCPAP治療も行っています。呼吸困難を起こす自然気胸や慢性閉塞性肺疾患、胸腺腫や縦隔腫瘍、サルコイドーシスなども担当しています。